加速器施設見学シリーズ(いつのまにシリーズ化したのか)、今回は西日本の加速器施設の雄、SPring-8の一般公開に行ってきました。ゴールデンウィーク初日、平成もあとわずかとなった2019年4月27日です。ブログにするまでどんだけ寝かせてたの。
今回も、クソデカ実験施設にストレンジな実験装置がズギャギャッと存在しており、最先端の研究施設だ~ゼ~! くわわッ! という感じなので、あんま細かいこと気にせずに(見に行ってる当のデーブ本人がまずよく分かってない)楽しんでいただければ幸いです。
過去の加速器施設見学シリーズはこちら
広いぜ広いぜ広くて死ぬゼ!なSPring-8
今回訪れたSPring-8の場所はこちら。
住所は「兵庫県佐用郡佐用町光都一丁目1番1号」。はい最高。いきなり最高が出ました。だって光都ですよ光都。たまんないですよね。大規模放射光実験施設を建てるべく吉備高原の東端を切り開いて作られた学術公園都市「播磨科学公園都市」に名付けられた地名ですよ。光都。言うなればPhoton City(フォトンシティ)ですよ(合ってるかは知らん)。
あまりにもサイバー、あまりにもサイエンティフィック。地名だけなら日本でも屈指の住みたい街だと思います。
で、SPring-8ってなんなの? デビロット姫の乗ってる奴? デビロット姫が乗ってるのはスーパー8ですね。SPring-8とは、
Super Photon ring-8 GeV(8GeV = 80億電子ボルト)
の略称。「80億電子ボルトの超スゲー放射光加速器だ~ゼ~!」という意味でしょう(多分)
さて、そんなこんなでやってきましたSPring-8。一般公開日ということで、「受付」の看板が立てられています。この写真の画角いっぱいに表示されているのが「中央管理棟」。では、お目当ての加速器はというと……
このデカさ。分かりますか? 上の航空写真(Googleマップ)で「大型放射光施設SPring-8」と書かれたピンの立っているところが中央管理棟です。その背後に鎮座する巨大な円形の構造物。これが、加速器を内包する「蓄積リング棟」です。
中に入ると、もうすんごい広い。写真の右側に見えている四角いハコ状のブースのようなものが実験ステーションで、そのさらに右奥(円の中心側、外からでは見えてません)に加速器があります。こんな感じで、実験ステーションがずーっと円周状に並んでいます(見学出来た範囲では)。
同じ放射光実験施設としては、茨城県つくば市にあるKEK(高エネルギー加速器研究機構)にあるPhoton Factory(フォトンファクトリー)があります。過去の一般公開時に撮った写真がこちら。
実験ステーションが鈴なりに連なり、また複数のラインが並んでいるように見えます。ここも見ての通り空間としては広いのですが、SPring-8に比べると、ちょっと混み合ってるような印象に。
Photon Factoryの実験用ビームラインの配置は以下のようになっています。
これに対して、SPring-8がどうなっているかというと、これ。
なんかもう、数が違う。そして、入り組んでない。整然。
それもそのはずというか、Photon FactoryとSPring-8はこれぐらいサイズに違いがあるんです。
というわけで、この広くてでっかい加速器が、今回の見学のメインディッシュなのです。え、広さを説明するだけなのに長い&多いって? いやあ、ある程度説明が出来るの、これぐらいなんですよね……。この後に出てくる実験装置の数々は、いつもどおりまるで説明できません。
広大な加速器を取り囲む実験装置たち
というわけで、ここからは全く説明出来ない実験装置の写真ばかりです!(諦め)
実験ステーションの外にパソコンが置いてあるデスクなどがあるんですが、なんというか広いので開放的。
移動は自転車! KEKのKEKB加速器の中も確か自転車があった気がする。
実験用の資材類がそこら中に置いてあるんですが、見てください余裕の広さです
というか、実験ステーションの外でも、ビームを使わない実験とかはやってたりするんでしょうかねこれ
簡易的な暗室?の中でなんか実験する装置っぽい
突然現れた巨大な実験ステーション。小窓がついてて中を見ることが可能です。
中身はこんな感じ。中央の、なんか手前にぐいっとスイングしてきそうな部分は、高分解能スペクトロメータというものらしいです。
非共鳴 X 線非弾性散乱という性質を用いて、超高圧・高熱下での原子の動きを調べることで、同様に超高圧・高熱下にある地球内部の様子を解明しよう、ということらしい。
とにかく広いので、壁にプロジェクターで研究内容を展示したりしていました。
例によって、金属光沢のムフフな機器類が目白押し。
希少なXFEL施設「SACLA」
SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser(略し方に若干大人の都合を感じる)という、X線自由電子レーザー(XFEL)施設。世界に数か所(3か所?)しかないらしいです。
SPring-8とも施設を共用していますが、SACLA自体は線形加速器。SPring-8を超える8.4GeV(84億電子ボルト)まで自由電子を加速可能。
でも見学出来るのは実験研究棟部分を、2階の見学窓から見下ろせるだけです。
なので、ちょっと物足りない。
やわらかX線実験施設ニュースバル
SPring-8、SACLAとともに併設されている放射光実験施設が「ニュースバル」です。
サイズ的にはSPring-8と比べるとこじんまりして見える(SPring-8がデカ過ぎる)のですが、ぶっちゃけ見学先としては、この一般公開ではぶっちぎりで一番オススメです。
SPring-8、SACLAの施設運営者が理化学研究所(理研)であるのに対し、ニュースバルは兵庫県が建設し、兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所が管理・運営する、「県立大学」の施設です。
ニュースバルでは、研究所の科学者の方とともに施設をめぐるツアーが実施されていました。
ツアーではニュースバルの内部に入って見学出来るのですが、この一般公開で、加速器を直接見ることが出来るのは、ここニュースバルの電子蓄積リングだけです(多分)。
SPring-8が高エネルギーで透過性の高い硬X線と呼ばれる領域のX線を扱うのに対し、ニュースバルではエネルギーが低く、物質に吸収されやすい性質をもっています。その性質を利用して、物質の電子の構造を調べたりするのに使われているそうです。
SPring-8やSACLAと相互補完的に、幅広いX線実験が出来る、というわけですね。
J-PARCやKEKの円形加速器でもおなじみの偏向セル。
私が参加した回の解説は、兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 所長の渡邊健夫教授。つまりこの施設の最高責任者です。
それぞれの施設について丁寧に説明してくださるのはもちろん……
どうも見学ツアーコース外っぽいところにもドンドン入っていっちゃう! 所長最高! 同行してた研究所スタッフさんも苦笑い。地元の高校生なども見学に来ているのですが、「県立大学でこんな施設持ってるの、日本でここだけだからね! 放射光に興味あったらぜひ受験してね!」とアピールしていました。そりゃそうだ。
見ているだけでうっとりしてしまう機器類。「先端研究では、自分たちが研究したいことに必要な器具は、いちから設計して作るしかないんですね。だから、ここにあるのは全部自分たちで設計して作ったものです」
見学に来ていた女子高生が渡邊教授にサインをおねだりしているのが超印象的でした。未来のやわらかX線ガールに期待したいものです。
シカバーガー!シカコロッケ!SPring-8はシカだらけ!?
さて、見るものも見たのでカロリー摂取の時間です。。SACLA実験棟の前にある飲食スペースでは、地元である佐用町の飲食店が出店していました。提供しているのは、ほとんどがシカ肉メニューです。
佐用町、めちゃめちゃシカが出るそうで、害獣として駆除したシカを、ジビエグルメとして活用しているのだとか。
ちなみに、SPring-8の敷地内にもめっちゃ出るらしくて、写真は出しませんが、中央管理棟の前の芝生になっている広場にはいっぱいシカのフンが落ちてました……。
さっそく、シカ肉のパテを使った「しかバーガー」をいただきます。
うまい! 牛肉ほど脂っけはありませんが、「赤身の肉食ってる!」って感覚が強いです。
いやー、でもなんかファーストフードっぽい見た目だけどヘルシーっていうか、足りなくないですか? カロリー。モアカロリー、モアオイリー。大丈夫、あるんです。
マカロニ入りのクリームコロッケで鹿肉のパテをサンドするという、カロリーの申し子「しかサンド」が。
揚げて油を切ったコロッケの上に、シカ肉パテがどっかりと乗り……
その上にさらに揚げたてコロッケがドーン。
この断面の力強さ! これは純粋なカロリー。コロッケの中身は炭水化物ですから、実質バンズですし、パテとの食べ合わせもバッチリ。シカ肉にコロッケから油分が供給され、ジューシー・オイリー・カロリーのトリニティがここに誕生しました。
ちょっとこれもう一回食べたいですね……。
でかくて広くて開放的な先端研究施設、GWのおでかけにピッタリ!
というわけで加速器施設見学シリーズ第3弾、SPring-8一般公開をざっくり紹介してみました。
紹介もなにも、展示されてる研究内容について全然紹介できてないじゃねーか! というのはごもっとも。だって説明出来ないんですもん。ド文系ですみません。
こういう先端研究によって、身近な工業製品の素材が開発されたり、人体の細胞の働きなどが解明されてたりする、と思うと親近感もわいてきますし、そんな細かいことよりなんかわけわからん機械がわけわからんけどカッコイイんじゃ! でもいいと思います。
SPring-8は毎年、GWの冒頭に一般公開されますので、連休の最初のおでかけ先に、家族や友人と行くにはいいところだと思いますよ! ではでは!
おまけ:ここが日本のテクノの中央だ
冒頭に「光都」という地名で盛り上がってしまいましたが、交差点の名称とかも激アツなんですよ。
テクノ中央。
隣接している公園は、「テクノ中央公園」らしいです。カッコイイ。ここでテクノミュージックの祭典とかやってほしい。
参考:どんだけデカいのSpring-8
放射光施設同士ということでPhoton Factoryとのサイズ差は冒頭で比較しましたが、その他の円形加速器とも比較してみましょう。縮尺は揃えてあります。